最終章 二人のキーノート

1/9
前へ
/66ページ
次へ

最終章 二人のキーノート

「千諒君、ここで久住椿がお世話になっているって聞いたんだけど」 「え? 椿?」  例の駅裏の観光施設のことで、浩己さんがオフィスを訪れた。市と商工会のメンバーが関わっている事業なので、この件で浩己さんとは時々顔を合わせる。 「大分賑わっていて活気があって、良かったですね」 「雰囲気も居心地も良いってすごく評判いいよ。ありがとう」 「少しでも貢献できたなら」  そんな世間話をしていたと思ったら突然、〝椿〟と言うワードが飛び出して、ギクリとする。なんで浩己さんが? 「ああうん、俺知らなくて、この間初めて聞いたんよ」 「久住は、居ますけど……。お知り合いですか?」  「ああ、由梨の妹なんだけど」 「ユリの妹……は?」 「ああ、ごめんごめん。俺の妻、渡会由梨の妹なんですよ、椿ちゃん。由梨の旧姓は久住だからな」 「嘘でしょ?」 「嘘じゃないって」 「そう言えば、何学年か上にいたな、お姉さん。それが由梨さん……」  浩己さんとは、兄も含めてプライベートで会うこともあるため、由梨さんの事も勿論知っている。 「義妹(いもうと)がお世話になっております」
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2210人が本棚に入れています
本棚に追加