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最終章 二人のキーノート
「千諒君、ここで久住椿がお世話になっているって聞いたんだけど」
「え? 椿?」
例の駅裏の観光施設のことで、浩己さんがオフィスを訪れた。市と商工会のメンバーが関わっている事業なので、この件で浩己さんとは時々顔を合わせる。
「大分賑わっていて活気があって、良かったですね」
「雰囲気も居心地も良いってすごく評判いいよ。ありがとう」
「少しでも貢献できたなら」
そんな世間話をしていたと思ったら突然、〝椿〟と言うワードが飛び出して、ギクリとする。なんで浩己さんが?
「ああうん、俺知らなくて、この間初めて聞いたんよ」
「久住は、居ますけど……。お知り合いですか?」
「ああ、由梨の妹なんだけど」
「ユリの妹……は?」
「ああ、ごめんごめん。俺の妻、渡会由梨の妹なんですよ、椿ちゃん。由梨の旧姓は久住だからな」
「嘘でしょ?」
「嘘じゃないって」
「そう言えば、何学年か上にいたな、お姉さん。それが由梨さん……」
浩己さんとは、兄も含めてプライベートで会うこともあるため、由梨さんの事も勿論知っている。
「義妹がお世話になっております」
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