最終章 二人のキーノート

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*  初めてキスをした日、まだ朧気だったお互いの気持ちを確認し合ったあの日の夜、そのままの勢いで結ばれるという展開にはならなかった。 「──あ、やばい。ここオフィスだった」  散々、久々に再会した恋人同士のような時間を堪能した後、我に返る。 「三枝君、出張帰りでお疲れなのに」 「はー、大丈夫。満たされた」 「ぐ……」  久住はまだ俺の腕に捕まえられたまま。 少しとろんとしているけれど、逃げようとモソモソ動いているので仕方なく解放する。 「久住も会いたかったでしょ? 俺に」  ほら、会いたかったと言えーと言いながら、片手で両頬を挟みぶにっと潰す。思いっきり顔を逸らされる。 「なに?」 「今わたし、女の顔してると思うから見られたくない」 「女の顔? ダメなの?」 「ダメ。嫌われたくない」 「……よくわからんけど、好きだって言ってんじゃん。それより久住さんさ、あなたなんか煙草の匂いするな、微かに。今日何してた?」 「え?」  分かり易い。  あからさまにギクッとするんじゃない。 「誰か、いるの?」 「そんなわけないじゃん。……違う。やましいことは何もないけど……って、なんで言い訳してるんだ」 「それで?」
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