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「いやまず良かったじゃない。お兄さんも喜ぶでしょ?」
「あ、言ってません。言わないです、しばらくは。親以上にうるさいんで」
だろうな、と言って浩己さんが笑った。
知られたらもう、すぐに会わせろだの家に連れて来いだの騒ぎになるのは目に見える。
「あーー」
「え?」
「この白シャツ……」
「シャツ?」
浩己さんが、自分の着ているシャツを引っ張って、何か俺に訴える。
「何ですか?」
「いやー、繋がった。ステージが違う、崇拝、ねぇ……なるほど。千諒君さ、ブルーのシャツもらったろ? なんかやたら爽やかなやつ」
「なんでそんなこと浩己さんが知ってるんです?」
「我が家は全部、話が筒抜けなもので」
「あぁ」 由梨さんか。
「ははは、図らずも千諒君は、俺の義弟になる運命だったってわけだな」
「まだ始まったばかりで、わからないですけど」
「けど本気なんでしょ? 君がつき合うって決めたくらいだから」
「そうですね」
そう、まだ始まったばかり。
お互いが思ってもみなかった方向に動き出してしまった。
休みの日の過ごし方〝久住の場合〟は、とにかくアーティスティックで。
一緒にいるようになって一ヶ月くらい経った頃、神妙な顔をして
「絵を描きたいから部屋を使わせてほしい」というものだから、部屋くらいどうぞと、使っていない一部屋を久住の部屋にした。
何をする気なのかと思ったら、開けてびっくり、とんでもない状況になっていた。
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