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大きめのダボっとしたYシャツは、直接服が汚れないように着ている。けして、男心をくすぐるためではない。
「あのさ、下着姿にYシャツって……」
「え、下着? 履いてる履いてる。ショートパンツ、履いてるから」
そう言ってチラリと、ショートパンツ姿の足を惜しげもなく晒す。
髪もふわっと無造作に纏めて、そんな艶めかしい姿を見せられたら、我慢できないよね? よいしょと持ち上げて、隣の寝室に連れて行く。
「うわ……お姫さま抱っこだ」
「もやし過ぎて筋肉がないとでも思った?」
「絵の具、出しっぱなし……」
「少しだけ、お願い、戯れたい」
「ぐ……やめてその顔、なんでも許せちゃう」
多分、ラブラブ
ちょっと坂道を駆け上がっていく勢いの、自分自身が怖い。
個性 対 個性
モノづくり vs アーティスティック
職場ではまだ誰にも知られていない。
そのうち公になるだろうから、今は静かに育みたい。だからこそ気が抜けないという緊張感。色ボケしてるなんて言われちゃ困る。
久住といると、思いもよらないことばかり起きる。刺激的な毎日ではあります。
けれどまたそれが心地良い。
運とタイミング、それらは必然。散々怖がってきたから、今を大事にしたい。
*
「あ~そのシャツやっと着てくれた。そしてやっぱり、めっちゃ似合う️!」
下のパンツと小物を濃紺、とにかく控えめにして、なんとか着てみた。
「着心地はいい。だけどまだ寒い、春夏だな」
「三枝くんは何をどう着ても似合うんだね。困ったね」
「あなたの趣味の、見ようによってはアリ? みたいなギリギリのやつを、俺に充てがうのだけはやめてほしい」
「失礼な、ちゃんと良いと思って選んでるんだわ」
お洒落なんだろうが、たまにトリッキー。
微妙にそこらへんの趣味は合わない。
だけど本人が好きで着ている分にはとても似合っていると思う。
「じゃあ私もそれに合わせてブルーのスカートはこう」
いやそれ、どう考えても……。
「ちょっと待って」
「ん?」
「俺を、っていうか我々何歳だと思ってますか? 勘弁してください、ペアは」
「あーそう、嫌なの? ペアじゃないわ。なんとなく雰囲気一緒だねってくらいだけどな」
そう言って、少しシュンとする。
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