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幕間
「よくない?イルミネーションと雪!」
「あんたねえ、話聞いてた?」
「何が?」
やれやれというように角南が大げさに肩をすくめる。私はなんだよう、と口を尖らせた。
「突拍子もないのはナシって言ったでしょ」
「王子様なんて出てないじゃん」
「イルミネーションなんてどうやってコントロールすんのよ」
「あ」
あらら、と盲点をつかれた私にそれ見たことかと言わんばかりの角南の顔が腹立たしい。
「役所に掛け合うとか」
「現実的じゃないっつーの。しかもあそこ今は大賑わいでめちゃくちゃ人が多いからね」
「え、そうなの」
「うじゃうじゃとカップルがいて鬱陶しいったら」
「お姉ちゃん、いつの間にそんなところに行ったの?」
「……それはいいじゃない」
予想外の知名見の横槍に、角南が強引に視線を逸らした。どうやら付き合っている人がいるらしいのだが、なぜかひた隠しにしている。知名見の考察では、某社の年下編集担当君が怪しいらしいけど。
「ともかく、それは実現不可能ハイさよなら」
「でもプロポーズの言葉は素敵だよ」
「だよね、恵涛もそう思うよね」
「うん。僕は最期に見るのは礼兎君がいいな」
思いっきりドヤ顔をしてやったら知名見の横槍で失速した角南が悔しそうな顔をした。ザマアミロだ。
「じゃあ次は私でいいかしら」
知名見が姿勢良く私たちを順に見渡した。はきはきしてるとかじゃないけれど、よく通る声は明瞭で、きっと会社での会議中もこんな感じなんだろう。私が知名見の部下なら絶対惚れると思う。
「ええ、あたしがトリかよ」
「当たり前じゃない、お話作りのプロなんだから」
あっさりと言ってのけて美しい笑みを見せてから知名見は「それじゃあ私はとあるレストランで」と話し始めた。
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