浅い眠り

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浅い眠り

 浅い眠りから目覚めてしまい、布団の中からカーテンの方に目をやると、隙間から闇が見えた。  体に残る眠気、そして、頭の中の靄のかかり具合から今の時間を予想し、傍に置いてある携帯電話を開く。目が眩むほどの光が、まだ開いてない黒目を強く撫で、強く顔をしかめた。  朝の3時ちょうどを表示している携帯を再び閉じ、少しはだけていた布団を被り直す。  隣で寝ている千恵美を起こさないように、ゆっくりと寝返りをうった。  強い光を見たせいか、少し頭が冴えてしまった。  いつも浅い眠りしか出来ないから、こんな時は辛い。  下手をすれば朝までこのまま寝返りをうち続けて、起きる羽目になる。  深い眠りを堪能したのは、いつだったのか記憶にない。  千恵美と2人で暮らし始めてからは、深い眠りにつけていない気がする。  目を閉じると、瞼の裏に2人で暮らす前の光景が蘇ってくる。  女同士での交際が周囲にバレて、家族にもバレてしまったあの時のこと。  夜逃げをするかのように2人で家出をして、そのままこの地に居ついた。従妹だと関係を偽りながら過ごし、もう、長い年月が過ぎている。  2人で暮らすことには、本当に幸せを感じている。  だけど、周囲に自分達の関係がバレたらどうなってしまうのかに脅えてしまう自分がいて、安心できない自分がいる。  強く目を閉じて、瞼の裏に映る過去の映像を潰す。  じんわりと映像が潰れ、真っ黒な染みが広がっていく。  このまま闇に飲み込まれればいっそ、楽になるかもしれない。  そんなことを思うことがしばしばある。隣から聞こえる寝息を聞く度に、その思いが強くなっていく。  飲み込まれるのなら、いっそ2人で。  そう願う自分に架空のナイフを突き立てて、今日も眠りの世界に誘われるの待ち続ける。  多分、今日も眠れそうにない。
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