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「相沢さん、宿題、前に回して」  小声でそう言ったので、今の状況が把握できた。  今日提出の宿題を、今集めているのだった。  また自分はどこかに飛んでいたようだ。後ろから回される宿題を受け取り、自分のカバンから宿題を出すとそのまま前へと回した。  周囲を見ると、今回はあまり目立たなかったようだ。宿題を忘れた人間が教壇の前で軽い説教を受けている。  そこに、皆意識が集中していたからだ。  時計を見ると、まだ九時にもなっていない。今日帰れるのは確か十一時ぐらいだったはずだ。  あと二時間もこんな風にしていなければいけないと思うと少し参ってしまう。出来るだけ美術室にこもって作業がしたいのに。  続いていた説教が終わると、芳川が体育館へ移動するよう促す。  学年集会と言う名の、ありがたい程長い時間のお説教が始まる。  利香はもう一度時計を見た。  勿論、時計は一分も進んでいない。  大きなため息をついた後、椅子から立ち上がり、教室の外へと出ていく。夏休みのことを楽しそうに話しながらだらだらと集団で歩くクラスメイト達を置いていくように、利香は体育館へと歩いていった。
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