6

1/1
前へ
/62ページ
次へ

6

 体育館で開かれた学年集会では、教師から夏休みの間に学校にクレームがあったことを告げられ、それに関しての諸注意という名のお説教が始まった。  一部の『何を言われても何かをやらかす』という人種のせいで、お尻が痛くなるほど体育座りをさせられるのは、腑に落ちない。  注意の言葉は毎度一緒だ。  中学生らしい行動を。  中学生らしい振る舞いを。  中学生らしい生活を。  何度も何度も言われて、目を閉じてその姿を想像すれば声が寸分の狂いもなく再生されるぐらいに覚えてしまった。  担任の芳川が、学年中の人間に目を光らせながら監視者のようにこちらを見張っている。  先程教室で挨拶をした際は『何も無くて良かった』などと言っていたが、あれは嘘だったのか。  あんなところで嘘をつかなくてもいいのに。大人ってのは、よくわからない生き物だ。  監視者というよりも、監視カメラのように定期的に首を振りながら生徒達を観察する芳川から目を逸らし、利香は学年主任の安田の少し横に目を向ける。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加