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 お決まりの言葉を並べる同級生たちを眺めながら、相沢利香(あいざわ りか)はその姿に疑問を覚えた。  同じ格好で、同じ仕草をしている彼女達は、まるでデジタルデータのように、コピーアンドペーストを繰り返している様な気がする。  勿論、少しは違うのだけれど、根本にある物が同じに思えてくる。 『目立たないように、そして、埋没するようにしていないと』  そんな声を自分の体の中に織り込みながら、日々を過ごしているように思えてくる。勿論、彼女達はそんなことはないと反論するだろう。だけど、どうしてもそんな風に思えてしまう。  でも、そんな生き方を否定する気力は無かった。  他人の服装や過ごし方に文句を言うのは、嫌だった。そこには、何も美しさが無いし、創造性が欠けているからだ。  だから、関係のない人間が過ごしているというだけにして、周囲の無駄な動きをシャットアウトした。  それよりも自分は、秋の文化祭に展示する絵をどうにかしないといけない。  夏休みの半ばから制作を始めないと間に合うかどうかが不鮮明になる。だけど、今日は夏休み最後の出校日だ。黒板の右側にある日めくりのカレンダーを見ると、八月二十五日という表示が教室を通り抜ける風に微かに揺れている。  制作に集中する為に宿題を早めに終わらせたというのに、これでは意味がない。だけど、イメージが固まらないのだ。
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