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ラブホテルという密室のため、何をしているのかなんて私と相手にしかわからない。
言わなければわからないし、ちゃんと料金さえ払ってもらえるのだったら、先生がひたすら時間いっぱい寝たって問題ないだろう。
「問題ないですよ。」
私はにこやかに答えた。
「じゃあ、ゆっくり寝たいから120分で。」
……驚いた。
キャンセルもチェンジもなし。
「連絡するのでお待ちください。」
マニュアルどおりに対応し、私は携帯電話を手にした。
店のスタッフ用の番号へ電話をかけると、ワンコールで『はい』と電話口にマネージャーの声。
「アキです。お客様と120分ご一緒いたします。」
『お客様から2万5千円いただいてください。』
「2万5千円ですね。わかりました」
『では、がんばってください。』
いつものようにすぐ切られる電話。
電話の後、すぐさま私はバックからタイマーを取り出しセットする。
「先生、2万5千円お願いします。」
そう告げる私に、なんともいえない複雑そうな表情を浮かべている先生。
先生は財布から2万5千円取り出し、素直にテーブルの上に置いた。
「……聞いてもいいか?」
ぽつりと口にする先生。
「何でしょうか?本名なら教えませんよ。……っていつもは言うんですけど、知ってますもんね。」
私はくすりと苦笑いを浮かべた。
もちろん『アキ』は源氏名だ。
「橋本明だろ?よくこんなきわどい名前にしたな。……じゃなくって……。俺のこと嫌じゃないか?……軽蔑するだろ?風俗利用してること…」
なんだかいたたまれないような様子の先生。
「別に…。むしろこっちは、風俗利用してる方の相手してる側ですし。……それを言うなら、私が風俗嬢していること、軽蔑してるんじゃないですか?」
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