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私は客を選べない。
もちろん一度相手して、もう嫌だと思ったら、その相手はお断りできるように店側へ申し出れば配慮してくれる。
接客中だって、相手できない問題が起これば、もちろん途中で帰ってもいいと店側からは言われている。
しかし、この仕事をするようになって三年、特定の客の拒否は後ほどお願いしたことはあるが、接客途中で帰ったことは今のところない。
ありがたいことに身バレしてしまうような知り合いや知人と鉢合わせしたこともない。
そういう人と会いたくないため、住んでいる場所から離れた店を選んだこともあり、それが功を奏している様子。
だから、今日もどんな相手なのかと少し緊張する程度で室内に入った。
大きなベッド。
その側には小さなテーブルと二人がけのソファー。
「ご指名ありがとうございます。デリバリーヘルス蜜月のアキです。」
そうにこやかに声をかけた私。
ソファーに座っている男性。
スーツにネクタイ無しのワイシャツ姿。
……そのお客様を見て、私は固まった。
相手も私と目が合った瞬間、大きく目を見開き固まってしまう。
「橋本……だよな?」
「……先生…、なんでここに……」
目の前には……高校三年の時の担任がそこにいた。
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