10.あれから

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「……一応言っておくが、俺はオジサンじゃない。まだ37だ」 彼女は目を細めてケラケラと笑った。 「37なんて、もう立派なオジサンじゃん! でも、オジサンはイケメンだから大丈夫だよ」 何が悲しくてこんな小娘に励まされなければならないんだ。 よりによって和歌の姿をした彼女に。 俺は思わず舌打ちした。 完全に彼女のペースに飲まれている。 「…………ルーク・ウィルソンだ」 「へえ、そんな名前なんだ。ルーク・ウィルソン……ルーク…………じゃ、ルーくんって呼ぶね」 ルーくんだと!?  親にもそんな甘ったるいあだ名で呼ばれたことのないこの俺が……。   反論しようと口を開けたが、俺を見上げる純粋な瞳は和歌そのものだ。 (く……くそぉ! こんなの反則だぞ!) 「はぁ……もう好きにしてくれ」 肺に詰まった空気をはあっと吐き出し、俺は思考を投げ出した。 げんなりとしている俺とは対照的に、彼女はウキウキとした様子だ。 「はいはーい! じゃ、次は私の番ね。……私の名前は立花ワカ。ワカっていう漢字は、和歌山県の『和歌』って書きます! 宜しくね?」 『初恋』  第一部 完
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