10.あれから

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「…………いえ。すみません。知り合いの友人に似ていたもので…………」 不思議そうな顔をしている彼女は、力なく手を離した俺の頬に優しく手を添えた。 「……大丈夫? ちょっと顔色が悪いけど」 「……っ! あ…………い、いえ。大丈夫です」 顔を覗き込んできた彼女に面食らい、どもってしまった。いい年してこのザマだ。 (カッコ悪い……) もし彼女と再会した時には、余裕を持って話をしようと思っていたのに。 いざその時となると、酷く取り乱してしまう。 (本番となると、何事も計画通りにはいかないな…………いや、目の前の彼女は「彼女であって、そうでない彼女」だ) 俺の心に、ある言葉が浮かんだ。 それは非現実的であったが、何故かしっくりきた。 ——『生まれ変わり』。 いくら何でも成長が早すぎるとは思う。 まだ彼女がいなくなって2年しか経っていないのだから。 それに根拠もない。 だがなんとなく彼女だと思ってしまう。 (きっとそうだ。俺には分かる) 恐らく彼女は人間として生まれ変わったんだろう。 だから見た目は同じなのに、記憶だけがない。 これがもし記憶を保った状態であったなら……どんなに良かったか。 彼女は、和歌の姿をした別人だ。 性格や口調がまるで違う。 彼女はもっとおしとやかで、いじらしくて、謙虚で……。 だがそれでもいい。 こうして一目和歌と会うことが出来たんだ。 俺の想いは報われた。
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