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「本当にすみませんでした。…………失礼します」
ビジネス口調で彼女に謝罪し、気持ちを切り替える。
彼女ではなかった。
だが俺は彼女に会えた。
それでいいじゃないか。
もう……俺も解放されてもいい頃じゃないか。
(……和歌、さよならだ)
いつか君に会えたら言いたかったことがある。
記憶と共に封印したままで、最後まで君に伝えることは出来なかったけどな。
交通の妨げになっている車へ戻ろうと、俺は来た道を戻り始めた。
「なっ……!」
歩みが中断された原因を見て俺は驚愕した。
しっかりと腹に回された二本の細い腕。
背中にぴったりとくっついている彼女からふわりと漂うこの香りは……金木犀だ。
「え……? あっ!」
ぎゅっと目を瞑って俺に抱き着いていた彼女は「ごめんなさい」と謝り、我に返ったようにぱっと俺から距離を取った。
後ろを振り返った俺は、彼女の頬を伝うものから目が離せない。
「あ……」
もしかして……和歌か?
「あの——っ」
「え? ……あ? …………なんで……泣いたりなんかっ」
一瞬彼女だと思ったが、気のせいなのだろうか。
俺は彼女に伸ばしかけた手を降ろした。
「……ごめんなさい。なんか、混乱してるかも」
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