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「断片化した記憶の隙間に、拾い集めてきた記憶を嵌めていく。違う出来事の記憶が混じっていたら、それを有るべき場所に戻す。僕に出来ることは記憶を復元すること、それだけだ」
彼は赤ペンでメモ用紙のaとbとcを丸で囲み有るべき場所に向かって矢印を書いて続けた。
「ただし、良い記憶も悪い記憶も、拾い集めた全ての記憶を嵌め込むから、辛くなるようなことも思い出してしまうかも知れない。人は記憶を落としていくことで精神のバランスを保っているんだ…それが崩れてしまうことに君は耐えられるかい?」
それでも僕にはどうしても思い出したい記憶がある。
もう覚えていないことだから、それは記憶とは呼ばないのかも知れない。
それでも記憶の引き出しにある残りカスでも良いから、記憶の隙間に嵌め込んで貰いたい、僕はそう思った。
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