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「じゃあこの同意書に名前を書いて。もちろん内容をよく読んでからね」
その同意書には、施術中に電気的なショックが与えられること、現在の人間関係に影響を及ぼすかも知れないこと、精神が病んだり酷いときには廃人になるかも知れないこと、そんなネガティブなことがたくさん書かれていた。
「質問は有るかい?」
「僕の記憶の内容は君に覗かれてしまうのかい?」
「まさか。施術に来る人の記憶をいちいち見ていたら、僕の精神が病んでしまうよ」
それを聞いて僕は躊躇い無く署名した。
施術室に入ると、簡易なベッドと、その横には低く唸り声をあげる白い冷蔵庫のような形をした装置があった。その装置からは何本かの黒いコードが伸びていた。
電気的なショック。きっとあのコードから電気が流れるのだろう。
「じゃあこれを…」
彼は僕の頭にヘッドギアを被せて黒いコードを繋いだ。
それから僕は鎮静剤を注射され、数秒で眠りについた。
深い眠りの中で僕は夢を見た。1980から1983。
僕はその3年間のことを、その時の彼女のことをはっきりと夢に見た。
それは美化された思い出などではなく、あの時のままの僕と彼女だった。
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