どうやら私、恨みを買ったようです

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どうやら私、恨みを買ったようです

貴族の身分制度とは、平民には想像もつかぬものだけど、公爵家という立派な大貴族様がどれだけ凄いのか、分からないベルではない。 平民を追い出す為に平民を娶るという笑い話にもならないことが起こったその日、ベルは額に青筋を浮かべて怒りを露わにするアーデル公爵夫妻と対面した。 そして任務を命令、ごほん、強制、ごほごほ、されたのだが、ベルは自分が知らない内に結婚していた事実にまず驚いた。 当然、離婚を訴えるも、たかだか平民の戯れ言に耳を貸す貴族はいない。 いいからヤレと、ヤラなければ今すぐ処分、失敗すれば口封じのため散る命、という鬼畜発言に脅され威嚇され泣く泣く任務を請け負うことになる。 しかし、そこは大貴族。 ムチの後には飴が待っていた。 成功すれば一生遊んで暮らせる報酬を約束し、しかも役目実行中は実家に支援金までくれるという。 よし! 乗った!! 目先の金と莫大な成功報酬に目が眩んだベルは、茨の道に足を突っ込んだことに気付いていなかった。 「貴女がシャルリーナ? ふぅん、 貴族の令嬢も大したことないのね。言っとくけど、あんたにザハルの関心はないの。奥様気取りで振る舞うつもりなら、私もザハルも民衆も黙ってないからね!」 「……どちら様ですか?」 金の為にやる気が満ちていたベルは、いきなり現れた美女に素っ気なく返す。  話しは大方アーデル公爵夫妻に聞いて知っていた。 名乗りもしない、ボインボインの胸にくりんくりんの目、燃えるような赤毛のこの美女は、間違いなく色ボケ嫡男様の溺愛シンデレラ。 名をアマリアという。 知ってて知らないフリをした。 貴族令嬢に見えるよう背筋を伸ばし、口元にほんのりと侮蔑を込めて。 最初が肝心。  牽制に来たようだが負けません! と、意気込んだのが悪かったらしい。 その日のうちに、ベルは純愛を引き裂く悪女に仕立て上げられていた。 それだけではない。 何をどう聞いたのか知らないが、色ボケ野郎がベルに怒鳴り込みに来やがったのだ。 「シャルリーナ!!」 違います。 「お前という奴は身分を振りかざし私のアマリアに酷い暴言を吐いたそうだな!」 吐かれたのは私です。 「くそっ、いくら政略とは言え、お前のような腐った性根のやつと結婚なんて最悪だ!」 同じく! 「今すぐ出て行け!」 出て行きたいが命は惜しい。 睨み合いの末、ベルのお目付け役兼、公爵夫妻の手先であるジンさんが取りなしてくれたけど、色ボケ嫡男様に超絶嫌われたことだけは確かだった。 初っ端から蹴躓いている。 今思えば、酒場で採用されたボインボイン美女も赤毛だったから、八つ当たりもあったかもしれない。 いや、最初が肝心と気を引き締めた結果、色ボケとの結婚に行き着いたのだ。 対応の仕方を間違えた。 ベルは反省したが、いいや、と思い直す。 そもそもこの仕事を請け負う羽目になったのは、お前ら二人のせいじゃん!!
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