676人が本棚に入れています
本棚に追加
《Side 橘》
俺は今日空き教室であったことを思い出して、自室のベッドの上で悶えていた。
俺にも補給させて、そう言っておもむろに頭の後ろに手を回され引き寄せられたかと思えば、口を塞がれた。
今思い出しても、過去一最強にかっこいいかなめくんだった。
かなめくんは最近、俺とのスキンシップに今まで以上に抵抗感がなくなっている気がする。
面倒くさがりはするものの嫌がる素振りも見えず、口ではツンツンしてるけどこれはかなめくんのデレだなと確信した。
かなめくんはかっこいいけど、それと同時に可愛くて可愛くて仕方がない。
リビングで夕飯を食べている時も俺のニヤニヤはおさまらず、家族に顔が緩みすぎて気持ち悪いと言われる始末だった。
「また要くん?」
「えへへ...」
「兄貴がきもいー。てか俺も要くん見たかったんですけどー母さんはいいよな〜」
「要くん想像通り頭良さそうで綺麗な子だったよ、まさか順也がああいうタイプの子好きだとは思わなかったけどねー」
「ますます気になるわ」
母と弟の会話なんて耳に入ってこず、俺は胸いっぱいな気持ちで早くかなめくんに会いたいなと明日を待ちわびていた。
寝る前に、ふとスマホの画面を確認すれば画面には俺とかなめくんのツーショットが映し出される。
あれから悩みまくったら結果、俺のかなめくんアルバムから選ばれしベスト5を定期的に待ち受けにすることで脳内会議は落ち着いた。
「ほんとかっこい、、」
目を瞑れば夕方の光景が蘇ってきて、また悶える。
かなめくんは俺をどれだけきゅんとさせれば気が済むんだろう。
••••••
翌日10時。
2日目の文化祭が幕を開けた。
早くかなめくんに会いたいなーなんて思いながら教室の扉を開ければ、すぐに女子たちに取り囲まれヘアセットされる。
俺は謎に1回分シフトが増やされており、クラスの人にやんわりと文句を言うが聞き入れてもらえなかった。
ふと教室を見渡してもかなめくんは見当たらない。出番までまた空き教室にいるのかな
うちのクラスでは今日から新たにチェキ300円という、おそらく守銭奴が考えたであろうオプションが追加されていた。
昨日も写真を求められることが多かったけど、お金を取ることで少しは落ち着くといいな〜
しかしいざお客さんが入れば昨日のように指名がたくさん入る。
昼前にはかなめくんとシフトが被るから、それまでの辛抱だと頑張った。
11時ごろ、ふらりとかなめくんが教室に現れた。
...相変わらずかっこいい、
クラスの女子もかなめくんを見つけてテンションが上がっているようで、無意識のうちに俺の旦那だぞと目で牽制してしまう。
「かなめくん〜」
「ああ橘くん、お疲れ様。やっぱり今日も忙しいかな?」
その格好でいつもの優等生スマイルを浮かべられると、本当に執事みたいだ。
俺の後ろで女子のやばい眼福〜という声が聞こえ、たしかにその通りだと思った。
「今日は有料のチェキオプションが加わったんだけど、それでも写真撮ってって言う人いっぱいいるよ〜」
俺の言葉にもかなめくんは調子を崩さず、橘くんはかっこいいからしょうがないね、と笑っている。
さすがだなー
きっと心の中では、誰だよそんなしょーもない金稼ぎ考えた奴...と面倒臭がっているに違いない。
「とりあえず今日も頑張ろうね」
そう言ってかなめくんは指名の入った机に向かって行った。
その机には同じ学校の奴らがグループで鎮座しており、おそらく噂を聞きつけ早速かなめくんを指名したんだろう。
みんなにかなめくんが知られていくのは、なんかやだなあ...ふとそんな考えが思い浮かんで、でもかなめくんの特別は俺だけだからと無理やり自分を納得させる。
「高橋くんお疲れー!休憩で大丈夫だよ!いやー稼いだ稼いだ〜」
クラスメイトのその言葉にかなめくんはこちらとちらりと窺う。
俺に声がかからないところを見ると、まだ馬車馬のように働かなくてはならないらしい。
諦めて作業に戻ろうとした時、かなめくんがクラスメイトに話しかけるのが聞こえた。
「ごめん、橘くん今日もずっと表出てもらってるし、ちょっと休憩入れてあげてもいいかな?」
「えー!...まあいっか、高橋くんにも予定以上に稼いでもらったし」
「ありがとう、じゃあちょっと休憩連れていくね」
そう言ってかなめくんは、教室の出口付近で俺に手招きする。
あああかなめくん〜大好き、、
俺が犬なら、はち切れんばかりに尻尾を振っているだろう。
かなめくんに駆け寄れば、何も言わずに空き教室へと足を進めた。
「お疲れ」
「かなめくんありがと〜」
「橘なんやかんや働き詰めだしな、ほんと馬車馬のごとくよくやるよ」
かなめくんは普段ツンツンしていることが多いけど、本当はすごく優しい。
そのギャップにやられる人は俺だけじゃないはずだ。
俺だけに優しければいいのに...そう思ってから、困ってる人をなんだかんだほっとけない要くんだから俺は好きになったんだなと思い直した。
「かなめくん」
「何」
「...俺を見つけてくれてありがとね」
「何の話?見つけた覚えねーよ」
かなめくんは忘れているだろうけど、俺は何度もかなめくんに見つけてもらってるから。
俺がいつものように笑えば、なんだよと笑い返される。
こんな日常がずっと続けばいいのにな、と今日も思うのだった。
最初のコメントを投稿しよう!