ー要くんと秋冬春

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夜中に目が覚め、枕元に置いていたスマホで時刻を確認すれば午前2時が表示されている。 また微妙な時間に目が覚めてしまった。 部屋はしんと静まり返っており、時折同じ部屋の誰かの寝息が聞こえてくる。 さすがにもう誰も起きてないか ふと腰のあたりに慣れた感覚があり、橘かと悟る。 橘はなぜか俺の布団にいた。 おいこんなとこに来てまでこっちの布団に乱入してくんなよ いつものようにがっちりと腰をホールドされているので、とりあえず眠る橘を起こすことにする。 「橘、起きろ」 「んん、」 「橘」 小声で何度か呼んでも起きる気配がないので、上半身を無理やりよじってやつの頬をつねる。 「いひゃ...んん?あれ、、かなめくん?おはよ〜」 おはよ〜じゃねよ、何やってんだよ 普段なら気にせず放置して寝るが、今日はそうもいかない。 部屋には他の奴らがいるし、いくら寝相が悪くても他の布団に転がり込んで抱き合って寝てましたは通用しないだろう。 「橘なにしてんの、起きて」 「え、うん〜、、あれ?...俺またやっちゃってた...?」 無意識に転がり込んでくるとかお前の貞操観念どうなってんだよ 覚醒した橘に、ひとまず離れろと伝える。 「ごめんねかなめくん、俺いつものくせで...」 「ああうん、わかったわかった。とりあえず離れろって」 俺のその言葉に素直に腕を解き離れようとする橘だったが、何を思ったか今度は首に腕を回してくる。 「ちょ、橘」 「かなめくん、」 「何だよ」 「もうちょっとだけ...」 「お前な...」 「大丈夫だよみんな寝てるし」 まあたしかに部屋のやつらは寝てるけど、正直そういう問題じゃない。 橘は首の後ろに回していた腕を俺の背中まで下ろし、そのまま引き寄せてくる。 予期せず橘に抱きしめられ、おいまじかよといよいよ焦る。 「ね、かなめくん、もうちょっとだけ」 「...あーもう、わかったよ」 「えへへ、念願のかなめくんだ〜...はあ、すき、すき」 そう言って橘はいつものように俺の首元に顔を埋めてくる。 今日は橘と触れることが少なく、かつ朝から気を張ってたせいか、いざこうされるとどこか落ち着いてしまう自分がいた。 「かなめくん、ぎゅーってして」 「あ?」 「お願い」 俺も限界なんだって、と思いながら渋々言われた通り橘の背中に手を回し抱きしめてやる。 なんだよこの背徳感、絶対だめだろ このままお互い寝落ちでもしたらまじで洒落んなんねーぞ 頭ではわかっているものの、なかなか強く振り払うことができない。 ああもう、なんなんだよ 今日は朝からなんかおかしい 「かなめくん、大好きだよ」 首元で囁かれるその言葉に、新幹線の中で聞いた話がふと思い出された。 「...橘」 「なあにかなめくん」 「おいで」 俺の言葉に、橘は嬉しそうに擦り寄ってくる。 「俺、今日ずっと要くんに触れたくて触れたくて我慢してたんだよ、偉くない?」 そう小声で伝えてくる橘に、それは俺もだけどなと返せばまた嬉しそうに笑う。 「かなめくん、こっち向いて」 橘は俺の顎に手を添えた。 次の瞬間、俺の唇に橘の唇の感触がじんわりと伝わる。 最初は軽くされてから、次第にそれは深くなっていく。 「っ橘、、待てって、」 「待てない」 深いキスから逃れようと顔を逸らそうとすれば、頭を手で固定され引き寄せられる。 「..は、...っ」 橘の舌で歯の裏をなぞられ、背筋がぞくりとする。 そのまま舌を絡められたと思えば、一瞬離れ、またすぐに深く深く唇を貪られる。 「かなめくん..っ、」 俺の名前を余裕がなさそうに呼ぶ橘に落ち着けよと思うが、それは俺も同じかと自嘲した。 軽く身動いだ時に俺の足に橘のそれが当たり、おいまじかよと驚く。 「んっ...、、」 突然の快感に悶える橘。 いやまあこんなことしてんだから当たり前か 「わり」 「気持ちい...」 そう言って橘はあろうことか、自ら俺の足に腰を押し当て、緩く動かし始める。 おいそれはまずいだろ 慌てて唇を離し、橘の背中に回していた手でぽんぽんと背中を叩いてやる。 「だめ、橘」  「でも...っん、、ん...」 橘はそのまま俺のものにも手を伸ばし握ってくるので、さすがに手を重ねて止める。 「替えの下着ねーんだから、やめろ」 やんわり橘の手を掴んで続ける。 「帰るまで我慢しろよ、な?」 俺の言葉に、仕方なくと言った感じで握っていた手を離す。 「帰ったら、続きしていーの、、?」 躊躇いがちに呟かれた言葉に一瞬困惑するが、まあ2人きりならなと続ければ橘は力なく笑った。 「ほら、寝んぞ」 そのまま抱きしめていた腕を緩め、体を離す。 「俺寝られる気しないよ〜」 「それでも寝ろ」 橘は残念そうに返事をし、もぞもぞと自分の布団に帰っていく。 「橘」 「なぁにかなめくん」 「手」 そう言って布団の中で手を差し出せば、すぐに橘の手が重ねられる。 俺がここでこいつにしてやれるのはこれが限界だ。 その日は結局布団の中で橘と手を繋いで、修学旅行でおっ始めようとするとか付き合いたてのカップルの妄想かよと思いつつ眠りについた。 翌朝橘は明らかに寝不足そうで、ちらりと横目に見て俺も寝不足だわと心の中で突っ込んだ。
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