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第6回 死にゆく者への祈り
1987年・イギリス/アメリカ映画
監督:マイク・ホッジス
脚本:エドワード・モンド/マーティン・リッチ
原作:ジャック・ヒギンズ 『死にゆく者への祈り』
出演:ミッキー・ローク/ボブ・ホスキンス/アラン・ベイツ/サミ・デイヴィス/クリストファー・フルフォード/リーアム・ニーソン 他
<STORY>
IRA(アイルランド共和軍)のテロリストとして活動するファロンは標的を仕留める為に仕掛けた爆弾によって、誤ってスクールバスを爆破させてしまう。多くの子供の命を奪ってしまった罪に苦しみながら、ファロンは逃亡を図るも、逃がす手立てを作る代わりに再び殺しの依頼を受けざるを得なくなる。が、いざその殺しを遂げるもその現場を神父に目撃されてしまった。
<感想>
ハッキリ言って凡作。ミッキー・ロークを始めとするキャストは演技派揃いだし、ビル・コンティの音楽も素晴らしい。にも関わらず面白くない。ロークの魅力だけは引き出せているので、それが無かったら多分途中で寝てましたね。余程のロークファンでないと最後まで付き合うのは厳しい。
主な要因は演出とシナリオにあると個人的には思います。先ず演出ですがメリハリが全く無い。人物の会話のやり取りとアクションで緩急が全くついてない。全部同じテンションで演出している。アクションの見せ方に関しては相当下手くそでしょう。
監督のマイク・ホッジスという人は本作以外全然知らないんですけど、本作以外はどうなんでしょうか?今回はたまたまハズしてしまったのか?少なくとも本作においては良い結果を出せていないと思います。
次にシナリオですがストーリーが寄り道をし過ぎ。多分、登場人物全員にスポットを当てたいという意図があったのかもしれません。ミッキー・ローク演じる主人公のファロンと関わる神父、その娘、そしてファロンの命を狙うギャングの兄弟。のみならずファロンを逃がす手立てをする仲間にもスポットが当たります。
序盤にしか出てこない人物にまでキャラクター性を持たせようとその描写に尺をとるから、肝心のストーリーが止まるんですよね。進んだらまた次の人物の描写、それが終わって進んだらまた次の人物の描写に時間をかけるので、ストーリーの核が見えない。焦点がぼやけちゃうんです。無駄な部分は削ぎ落として見せたいものだけ見せるべきでしたね。全部やりたい気持ちは分かるんですけど、欲張ると何を見せたいのかがはっきりしなくなる。
具体的にどこを削ぎ落せば良かったのかは作り手のセンスにもよりますけど、本作だったらファロンと神父と娘以外は全部ですね。ぶっちゃけ敵役のジャック・ミーアンの描写もかなり余分です。作り手としては単なる悪者にして安っぽい映画にしたくなかったのでしょうが、ミーアンの人物描写がしっかりしてるからといってそれが作品を良くしてるかっていうと全然出来てないですからね。ミーアンがどんな奴かなんてのはどうでもいいんですよ。観客はファロンがどうなるのかだけが観たいんだから。
殺し屋から罪の告白をされた事で神父は警察に殺し屋の事を通報出来なくなるという着眼点は悪くないと思います。罪の告白をする事で神の許しを得ようとするのはキリスト教独特のものなので、それをもっと前面に出してたら名作になり得たでしょう。
ファロンは神に救いを求めたところで何も救われないと考えている男ですから、それが最後には死を目前にしたとはいえ、神に自分の罪を告白し、「どうか許しを」と言う展開になるのは良いストーリーです。余分なものを足しまくった為に、良い材料をわざわざ不良品にしてしまったんですから。非常に勿体無い映画ですね。
★★☆☆☆(2点)
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