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 なぜ、兄貴ではなく、俺が受け継ぐことになったのだろう、わが蒲原家の「一子相伝」の奥義を。  ・・・・・・・・・・・・・・・  三歳上の兄貴は都内の有名進学校に通い、将来を嘱望されていた。そのうえ、スポーツも万能で、バスケ部で日々汗を流していた。成績はトップクラス。俺はといえば、完全な出来損ないで、スポーツは得意だったが、勉強の方はさっぱりだった。幼いころから、よく兄貴と比較されてきたが、俺は別にめげもしなかった。俺にとっては、強くて優しくて優秀な兄貴は本当に自慢だったんだ。  俺たちの家は郊外にあり、一見どこにでもある中流のサラリーマン家庭。両親と兄貴と俺の四人家族。ただ、一つだけ世間と違ったことといえば、父方の実家が長野の山奥にあり、昔ながらの旧家だということだった。子供心にも、ごく普通の母方の祖父母の家と比べると、何かが違うと思わせられたものだ。何かは分からない。ただ、敷地の外れにある大きな蔵は不気味な存在感を示していて、好奇心からよく兄貴と中に入ってみようとしたが、近づくだけですごく怒られた。やがて、大人たちの会話から、蒲原の家には「いっしそうでん」といわれる秘密があるらしいことが分かった。それには親父が関わっているらしい。兄貴は後でその言葉を調べ、一人の子にだけ引き継がれる何かの秘密だということを俺に教えてくれた。でも、俺にはよく意味が分からなかった。
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