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俺は兄貴のような中高一貫校ではなく、ごく普通の公立中学校に通っていた。剣道部で楽しい毎日を送っていた。そんな俺が14歳になったとき、突然親父に呼び出された。
「明日からしばらく、学校を休め。長野に行くぞ」
盆や正月でもないのに、親父の実家に行くというのは突飛な話だった。しかも、親父はこのことは家族にも話すなという。
「兄貴は? 一緒じゃないの?」
俺は不安になって訊いた。親父は表情を変えないまま、硬い口調で答えた。
「彰、お前だけだ。翔にも絶対に言ってはいけない」
いうまでもなく、彰とは俺の名前で、翔とは兄貴の名前だ。
いつもは冗談を言ったりもする気さくな親父なのに、そのときは別人のように有無を言わさぬようすで、俺は何も言えなくなった。黙って自分の部屋に引っ込み、親父に言われたように荷造りをした。翌日早朝、俺は親父と二人きりで家を出た。
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