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私たちは、海鮮居酒屋の個室で向き合っていた。 駅から少し離れた所にあるこの店は、係長がひとりでたまに来るらしい。 店長とは仲が良いのか、店に入って顔を見た瞬間、話しかけていた。 「どうした、急に」 「いや、だってよく考えてください。私と係長が休みの日にこんな事をしてるって、少し前なら考えられませんでした」 「まあ、確かに」 「何がどうなったら、こういう事になるんでしょうね」 この短期間で係長とお酒を飲むのは2回目だ。 私の人生は、思っていた方向とは少し逸れ始めていた。 「考えても仕方がない。流れに身を任せてたら、そのうち良いところに辿り着くよ」 「……仕事だと細かいのに、プライベートだと適当ですよね」 何回か言ったような気もするけれど、本当に意外だ。 仕事とのギャップが凄い。 それが嫌な人が、係長を振っていったんだろうな。 「逆だよ。仕事では頑張って細かくしてるんだ。本来適当なタイプだ」 なるほど。けれど、ちゃんとしようと思って出来る人は、やっぱり有能な証に違いない。
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