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いつも落ち着いている小嶋、いや菜奈が慌てて取り乱すのは珍しい。 こういう姿もいいもんだなと、見ていて思ったりする。 「……ダメか?」 今更小嶋とも呼びづらい。菜奈と呼ぶことに楽しさを覚えてしまった。 「いや、その……ダメではない、ですけど。照れるというか、なんというか」 歯切れの悪い菜奈。 「菜奈」 反応が可愛くて、面白くて、何度も呼んでしまう。 「もう……分かりました、それでいいですから。社内ではちゃんと小嶋って呼んでくださいよ」 顔が紅潮している菜奈は、諦めるようにため息を吐く。 「分かってる。俺の事も、社内では係長だからな」 「大丈夫です。さすがに会社で友哉さんなんて呼べません」 当然だけど、友哉さんと呼ばれる事に慣れない。 けれど、係長と呼ばれるよりは友哉さんの方が嬉しい。 怒っている、という話で急遽会っている訳だけど、気がつけば和やかに楽しく、晩ごはんを食べていた。 気が付けば、久しぶりに会社の外で会った菜奈を見つめてしまっていた。
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