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慌てて否定する菜奈を見て、ようやく思考回路が動き出す。 「行こう。どこか行きたい所でもあるのか?」 「……いいんですか?」 菜奈は、なぜか不思議そうな顔で俺を見る。 「当たり前だ。この前だって俺の映画に付き合ってもらっただろ。行きたいところがあればどこでも付き合う」 「本当にどこでもいいんですか?」 「ああ。どこでも付き合う」 そう言ったところで、少し嫌な予感がした。 菜奈がここまで念押しするのは、何かあるんじゃないかと疑っていた。 その疑念は当たっていた様子で、ニコッと楽しそうに笑う菜奈。 「じゃあ遊園地行きましょ」 まずい、やっぱり俺が一番苦手とする場所だ。 「いや、ちょっと待ってくれ。遊園地は……ダメだ」 怖いものと高いところが、俺の嫌いなものだ。 つまり、遊園地なんてこの世で一番苦手な場所だ。 だって高いところと怖いところしかない。 「ダメですよ、どこでも付き合うって言ったじゃないですか」 楽しそうに笑う菜奈。こいつ、もしかして俺が遊園地苦手なの分かってたんじゃないのか。
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