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そんな事をボーッと考えつつ歩いていると、前に1組の男女が見えた。
「もういい、帰って」
「ちょっと待てって。話を聞けよ」
「信用できない人の話なんて、聞く意味ないでしょ」
「とりあえず聞いてから信用するか決めろよ」
「あなた話がうまいから、聞いたら騙される気がする」
「何だよそれ、騙すとか人聞きの悪い事を言うな」
男の声がどこかで聞いたことがあるような気がする。
街路灯がないところで話してる為、顔はもう少し近づかないと見えない。
男性が女の人の手首を掴んで「とにかくここじゃ何だから、俺の家で話し合おう」と言った瞬間、女の人の綺麗なビンタが男性の頬に命中した。
わー綺麗なビンタ。と呑気にそんな事を思う。
お酒が少し回って、視界が薄ぼんやりとしている。そんな時、ビンタの姿ははっきりと見えて、段々顔もはっきりとしてくる。
女の人は私とすれ違い、駅の方へ駆けていった。
険しい顔をしていたけれど、すごく綺麗な人だった。
ほんのり爽やかないい香りが漂ってきた。
そして残された男性を通り過ぎないと、私は家に帰れない。
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