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相変わらず元気な遥香。 遥香とは、しばらくご飯に行ってなかったから、久しぶりだ。 何か聞きたい事があるのか、聞いてみたけれど、仕事が終わってからにしますと、はぐらかされて、教えてくれなかった。 「小嶋さん」 聞き覚えのある声が後ろからして、ビクッとする。 伊藤係長だ。菜奈と呼ばれてはいたものの、やっぱりまだ小嶋さんと呼ばれる回数の方が圧倒的に多いので、違和感はあまりない。 「これ、見積もり依頼お願いしてもいいですか。後、これは発注で」 時間は15時半。この時間に係長が会社にいることは珍しかった。 「分かりました。発注は一箱でいいですか?」 「そうだね。一箱で」 社内では相変わらず丁寧な言葉遣いの係長。 プライベートとは大違いだ。 慌ただしく事務作業をしていた係長は、気がつけばもう居なくなっていた。 定時を過ぎても、係長が戻ってくることはなく、先に会社を出た。 「すみませーん」 会社を出てすぐ、後ろから声がする。
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