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私にかけられている言葉とは思わず、しばらく歩く。 遥香とは店の前で待ち合わせをする事になっている。 会社で待っていてもよかったけれど、ちょっとだけ残業するらしく、先に出てきた。 「こんばんわ」 横に並んで話しかけてくるので、そこでさすがに私に用があるのだと気がつく。 「……なんでしょう」 スーツを着ているので、サラリーマンみたいである。 紺色ストライプのスーツは高級そうだ。着こなせていて、よく似合っていた。 ただどんな職業かは知らないけれど、髪が茶髪なのはどうなんだと言いたかった。 かっこよければいいというものでもない。 「今から帰る感じですか?」 「はい、見ての通りです」 「じゃあご飯でも行きましょうよ。何が好きですか?」 典型的なナンパだ。こんな会社の近くでナンパされるとは思わなかった。 「……これから友達と予定があるので」 「えーーさっき家に帰るって言ったじゃん!」 しんどい、疲れる。こんな人と一緒にご飯なんて嫌だ。
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