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見ていて、なんだか微笑ましくなってくる。 「行こっか。俺ら邪魔っぽいし」 「はい、帰りましょ」 ふたりに聞こえないように会話をして、店を出る。 夜に吹く風も、生温かさが出てきた。夏の始まりを感じさせる。 まだ日は完全には落ちていない。少しずつ日も長くなっている。 店を出た瞬間、ネクタイを勢いよく外す係長。 「あーーー、疲れた」 やっぱり係長は二重人格なんじゃないだろうか。さっきとは別人だ。 けど、連絡してきた第一声も、疲れたって言ってたな。 「お疲れ様です」 「それにしても、まさか同じ店だとは思わなかったな」 「ですね。あのお店はよく行くんですか?」 駅に向かって歩きだす。 仕事終わり、一緒に帰るのは初めてだった。 「いや、初めて。シゲが相談があるって言うから、会社から近い店にしたんだ。明日の事もあるし、早めに帰りたかったからな」 ちゃんと明日の事を考えてくれていることに、少し感動した。 絶対に行きたくないはずなのに。
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