540人が本棚に入れています
本棚に追加
ふっと笑う友哉さん。その笑顔が、ドラマに出てくる主人公みたいだ。
「ありがとう。そんな真っ直ぐ言われると、さすがに照れるな」
「やっぱり照れてるじゃないですか」
「さっきは照れてない。今照れたんだ」
「何ですか、今照れたって」
「うるさいぞ」
ふたりとも食べ終わって、店を出ることにする。
約束通り、わたしが奢った。やっぱり割り勘よりは、場所によって奢ったら奢られたりの方が、気楽でいい。
けれど一杯600円というのは安すぎる。今時、もっと取ってもいいような気がする。
出しているお金の額でいえば、比べ物にならないけれど、そこは友哉さんに少し甘えてしまおう。
家に向かって歩き出す。
月が見えた。満月とはいかない、少し欠けた月。
明日は晴れそうでよかった。
「……俺も菜奈といると、楽しい」
「えっ?」
「だから、菜奈といると楽しいって言ったんだよ」
暗闇の中、街灯に照らされた係長の顔が見えた。
ほんのり赤くなっているような気がする。また、照れてる。
最初のコメントを投稿しよう!