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「今日の夜、空いてるか」
仕事のメールとは思えない文章に、思わず二度見してしまう。
周りに見られてないか確認して、こっそりと返信を打つ。
「それは、どういう意味ですか?」
こんなやりとり他の人に見られたら、ヤバいなと思いつつ、あまりこそこそしても怪しまれるので、あくまで仕事のメールだという堂々とした雰囲気を装う。
伊藤係長の返信は早い。
「話したい事がある。仕事終わったら時間作ってくれ」
大体どんな話かは予想がついた。
金曜日の晩、あんな衝撃的な場面に遭遇した。あれしかない。
心なしかメールの文章も、伊藤係長にしては余裕がないように見えた。
断っても、逃げれなさそうな雰囲気がある。
「一応聞きますけど、どういう内容ですか?」
聞いても一緒な気がしたけれど、聞かずにはいられなかった。
「会った時に言う」
まあ、そうですよね。という感じだ。
「いいですけど、どこに行けばいいですか」
回数を重ねるごとに、返信のスピードは上がっていく。
「駅前に春夏秋冬っていう店があるから、そこで。18時30分で俺の名前で予約しておくから、先に入って適当に食べてて」
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