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一番怖い席だと気がついた友哉さんは、さらに顔が強張っていた。 「……手、貸してあげても良いですよ」 安全バーが下げられたけれど、手は辛うじて繋げる。 「……菜奈が繋ぎたそうだから、繋いでやる」 準備が整ったのか、笛の音と共に動き出す。 ゆっくりと登っていく初めての感覚。 周りを見渡すと綺麗な青空、下には米粒ほどの大きさの人と、さっき見上げていた建物が見えた。 「見てください、めちゃくちゃ綺麗ですよ」 横を見ると、うっすら富士山が見えた。 本当に綺麗。これぞ日本って感じの景色、感動する。 「馬鹿やろう、今そんな余裕ない!」 「横見てください、横!綺麗ですよ」 怖いことを隠す余裕もないのか、友哉さんは目を瞑っていた。 「横なんか見れるか、馬鹿!どこまで上がるんだ、これ!」 「目開けてくださいよ。乗ってる意味ありませんよ」 「いやいや、絶対無理だ。目開けたら死ぬ気がする」 「目閉じてたら、もう一回乗せますよ」
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