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一番後ろに乗っているので、頂上までどれくらいかは分からないけれど、後半分くらいだろうか。 「おい、ずるいぞ。もう一回なんて無理に決まってるだろ!」 「じゃあ目開けて、横見てくださーい」 恐る恐る目を開ける友哉さんは、うおっと声を上げていた。 「想像以上に高いぞ!本当に大丈夫か、この高さ!」 「日本で一番高いジェットコースターらしいですよ」 「そんな事今言うな、馬鹿!ますます怖くなるだろ!」 徐々に頂上に近づいていく、あと少しだ。 「そんな事より、横です、横。右見てください」 「うおーーー、富士山だな」 「富士山です」 「……綺麗だな」 「綺麗ですね」 語彙力の乏しいふたり。 綺麗しか言葉が出てこない。 ふたりして富士山に見惚れていた瞬間、体がふわっと浮いたような感覚に襲われたかと思うと、一気に真下へ急降下する。 隣で声にならない奇声を発している友哉さんをチラッと見る。 下を向いていたかと思えば、すぐに左に傾き、右に傾き、一回転したり。
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