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私の家の最寄り駅に、そういえばそんなお店があった気がする。
係長とふたりでご飯。
そう考えると、急に緊張してきた。
いやまあ、そういう関係でもないから、緊張することない。
でも単純に上司だし、ちゃんと話したこともない。
仕事の電話はあるけれど、会社で話したことなんて、ほんの数回。
それがいきなりふたりでご飯だなんて。
ハードルが高すぎる。
さすがにこれは遥香にも黙っておこう。言えばあっという間に社内に広まる気がするし。
「わかりました」
「誰かに見られる前に、このメールは消しといて。店の名前だけ忘れないように」
そりゃそうだよね。そういうところはきっちりしてる係長。
返信をして、やりとりを全て消去する。
そうすると、今のやり取りも幻だったんじゃないかと思ってしまう。
その後、普通に仕事のやりとりを伊藤係長としたりして、さらに頭の中が混乱してしまう。
いつもの丁寧な伊藤係長が現れて、さっきの焦ったメールの伊藤係長は、偽物だったんじゃないかとすら思う。
「どしたの?なんか今日落ち着きないけど」
遥香に声をかけられる。よっぽどそわそわしてたのかな。
「……ううん。何でもない。月曜日しんどいなぁって思っただけ」
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