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よっぽど怖かったのか、頑なに拒否する友哉さん。 「仕方ないですね……じゃあ、お化け屋敷で勝負しましょう」 「なんだ、勝負って」 「先に声を出した方が負けです。勝った方の言うことをひとつ聞きましょう」 しばらく考え込む友哉さん。 気がつけば、皿の上にあったパスタは無くなっていた。 「よし、いいだろう。ただし、前は菜奈が歩いてくれ」 自信があるのか、ないのか、いまいち分からない。 自信があるフリをして、内心は全く自信がないはずだ。 「そんなのダメに決まってるじゃないですか。横に並んで歩きますからね」 「横に並んで歩いてたら、後ろの人に迷惑だ」 「そんなにすぐに後ろから人は来ませんよ」 「やだね」 「やだとか言わないでください。子どもですか」 「29歳だ」 「中身は9歳ですけどね」 「おい、誰が9歳だ」 「友哉さんですよ。おこちゃまです」 「今日の菜奈だってお子ちゃまだ。あんなにはしゃいでる姿初めて見た」 もう食べ終わってから随分経つのに、席に座ったまま、くだらない言い合いが続く。
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