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菜奈と呼ばれる度に、ドキドキする。 会社で小嶋さんと呼ばれて、プライベートで菜奈と呼ばれて。 これ以上は何も求めないから、ずっとこの楽しい時間が続けばいいのにな、と思った。 「そうですか?私なんてダメですよ。何も取り柄がないですし」 呆れたようにため息を吐く友哉さん。 「あのな、もっと自信持てって言っただろ」 そういえば、言われた。 「でも、友哉さんに褒めてもらえるような所何もないですよ」 大した取り柄もなければ、容姿だって普通。 友哉さんの横に並んで歩いていて、釣り合ってるとは到底思えない。 おでこに痛みを感じて、横を見る。 でこぴんをされた事に、遅れて気がついた。 「うるさい。菜奈には菜奈の良いところがある。自分を卑下するな」 おでこを抑えながら、目頭も抑えたくなった。 このままぼーっとしていると、泣きそうだ。 「……痛いです」 「痛くしたからな」 「暴力反対です」 「でこぴんは暴力に入らない」 「入ります、暴力振るわれました」
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