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強がる友哉さんをスルーする。走りすぎたのもあって、足がすぐに動かない。 今からすぐにジェットコースターに乗るのは、しんどい。 「そうしよう。疲れた」 近くのベンチに座って、コーヒを飲む。 段々と日が落ちてきている。 一日が終わろうとしていた。 「……楽しいことはあっという間ですね」 無意識に声に出していた。 聞かれてまずい事でもないけれど、心の声を聞かれたようで恥ずかしい。 「そうだな。菜奈といると、休みがすぐに終わっていく気がする」 友哉さんと目が合った。 目を逸らさずに、じっと見つめる。 逸らしてはいけないような、そんな空気が私たちを包んでいた。 口元を緩めて、ふっと笑う友哉さん。 「菜奈、ありがとうな」 「感謝されるような事、してませんよ」 「いいんだよ、お礼言いたい気分なんだ」 「変なの。じゃあ、私もありがとうございます」 「じゃあってなんだ。俺こそ、お礼されるような事してない」 「遊園地、楽しいです。友哉さんと一緒だから、です」 他の人と一緒に来ても、これほど楽しくはならなかっただろう。
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