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観覧車は比較的空いていた。 お化け屋敷で疲れたせいもあって、あまり会話はなく、やってきた観覧車に乗り込んだ。 向かい合って座り、景色を眺める。 遊園地の最後といえば、観覧車。定番中の定番だ。 「高いところは平気なんですか?」 ジェットコースターはダメだったけれど、観覧車は平気なんだろうか。 「天井があるような所は平気だな。飛行機とかは大丈夫だ」 怯える様子のない友哉さん。遊園地では、逆にレアな気もする。 暫くの間、沈黙が続く。 けれど、やっぱり気まずくはなくて、むしろ心地良さすら感じた。 観覧車が回って、どんどん高さが増していく。 オレンジ色に輝く夕陽が、めちゃくちゃ綺麗だ。 「今日はありがとうございました。こんなにはしゃいだのは久しぶりです」 「だろうな。珍しい菜奈を見れて良かったよ」 静かな空間に、ふたりの声が響く。 「私も、珍しい友哉さんを見れて満足です」 楽しかった、本当に。誰かと一緒にいて、こんなに楽しいのは初めてかもしれない。
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