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「……こんなみっともない姿、菜奈にしか見せないからな」 窓の外を眺めながら、友哉さんは言う。 顔が少し火照って見えるのは、夕日に照らされているせいなのか。 その姿を見ながら、私は思う。 薄々、自覚はしていたけれど、やっぱり間違いない。 私、友哉さんが好き。 仕事もプライベートも、どの友哉さんも、全部まとめて好き。 社内の人を好きになるなんて、あり得ないと思っていた。 けれど、人生何があるかわからない。 接点の全くなかった係長を好きになるなんて。 それに冷静に考えると、友哉さんと私じゃ釣り合わなさすぎるもんなぁ。 容姿も性格も、何もかもが地味過ぎる私じゃ、好きになってもらえる気がしない。 こんなに上手くいく気がしない恋愛に、自ら突っ込んでいくのは初めてだ。 とはいえ、目の前の人が好きだと自覚してしまったら、密室でふたりっきりのこの状況が、恥ずかしくなってきた。 「でも無理にカッコつけるより、そのままの友哉さんの方が、やっぱりいいですよ」
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