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個室に通されてしばらく経つけれど、係長が来る気配はまだない。
会社携帯は置いて帰ってるので、連絡手段がない。
来るまでひたすら待っているしかない。
先に食べといてとは言われたものの、そういうわけにはいかない。
普通に考えて非常識だし。とりあえず出されたお水を飲みつつ、時間を潰す。
会社の人で遥香以外の人とご飯に行くのは、初めてかもしれない。
そりゃ大人数で、会社としての飲み会とかはあるけれど、ふたりっきりなんて殆どない。
月曜から嫌だなぁ、憂鬱だなぁと思いながらスマホを見ながら待つ。
伊藤係長が現れたのは、それから30分後の19時だった。
月曜日という事で店内に人は少なくて、誰か来たのはすぐにわかった。
静かな空間に、ドタバタした足音が響く。
あ、来た。と感じた時に、急に緊張してきて、心臓が慌ただしく動き出す。
ドアが開く直前、背筋を伸ばして待つ。
「すまん、ちょっと仕事が長引いた」
入ってきて第一声は謝罪だった。
走ってきたのか、額には少し汗が滲んでいる。
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