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伊藤係長が普段どれだけ残業してるかは分からないけれど、今日はこの為に急いで仕事を片付けて、走ってきたに違いない。
「そんなに待ってないので大丈夫ですよ」
ジャケットを脱いで、向かい側に座る係長を見て、また緊張が高まる。
なんだか面接に来たみたい。
「まだ何にも頼んでないのか?」
そう言いながらネクタイを外す姿は、少しかっこいいと思ってしまう。
「係長がいらっしゃってからにしようかなと思いまして」
普段使わないような敬語を使ってしまうけれど、これで合っているだろうか。
「小嶋ってお酒は飲めるのか?」
係長はメニューを見ながら言う。まだ私と目は合わない。
「そうですね。強くはないですけど、そこそこは飲めます」
とはいえまだ今日は月曜日なので、あまり飲みたい気分ではない。
といいつつ、飲まないとこの雰囲気を乗り切れない気持ちもある。
「まだ月曜だからな。飲みたかったら飲んでくれ。俺は素面だとキツイから一杯だけ飲む」
色々大変ですねと言いたかったのを堪える。
「じゃあ私も一杯だけいただきます」
「何にする?」
「じゃあ……ビールにします」
店員さんを呼んで飲み物と、適当に料理を注文する。
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