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「誰も家に来ないからな。最低限、人間らしい清潔さが保っていればいいかなと思って」
「じゃあ、今度本当に人間らしいかどうか見に行きますね」
「おっ、是非そうしてくれ」
フライパンに油が弾ける音が、部屋に響く。
なんだか、急に静かになったなと思った時、後ろから友哉さんが覗き込んできた。
「びっっくりしたー、どうしたんですか?」
友哉さんの匂いが、体温が、すぐ後ろから伝わる。
私の心臓の音が、聞こえてしまわないかと、不安になる。
「大丈夫、気にせず続けろ」
「いや、気になりますよ」
そう言っても、離れる気配のない友哉さん。
こんな状況、料理どころじゃない。
「手際いいんだな」
耳元で喋る友哉さんの声は、いつもよりよく聞こえる。
「そうですか?まあ、ほぼ毎日作ってますから。さすがに慣れました」
「……誰かの手料理なんて久しぶりだ」
後ろで寂しそうにボソッと呟く。
「私でよければ、いつでも作りますよ」
一人も二人も、作る手間は大して変わらない。
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