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「ご馳走になったんだから、洗い物くらい俺がするよ」 「でもっ」 「いいから、菜奈がゆっくりしててくれ。洗い物終わったら帰るから」 これ以上言っても、譲らなさそうなので、諦めることにした。 「じゃあ……最後に食後のコーヒーでも飲みますか?」 「おっ、いいな。俺ブラックにしようかな」 終わったら帰ると言われながら、まだ帰ってほしくなくて、コーヒーを理由にして、滞在時間を引き延ばす。 けれど明日の事もあるし、無理はしてほしくない。 私は、私が思っているより、我が儘なのかもしれない。 マグカップをふたつ、食器棚から引っ張り出して、コーヒーを淹れる。 コーヒーメーカーなので、大した物ではないけれど。 コーヒーを準備しながら、キッチンに立つ友哉さんをチラッと見る。 長袖のワイシャツを捲って皿を洗う姿に、見惚れてしまっていた。 「食器はここに置いておけばいいのか?」 急に話しかけられたので、慌てて平静を装う。 「あっ、そうですね。棚に入れてもらって大丈夫です」
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