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店員さんが出て行った後、しばらく沈黙が続く。
世間話でもしたほうがいいのかなと思うけれど、係長と話す話題が浮かんでこない。
昨今の世界情勢とか?いやいや、バカがバレるだけになっちゃう。
「さて、俺がなんで今日こうして時間を作ってもらったか、分かるな?」
係長が沈黙を破って、話を切り出す。
仕事の時とは、話し方が少し違う気がする。
なんか上手く言えないけど、雑になっている。細かい丁寧な気配りができる係長とは少し違っていた。
「まあ……見事にビンタされてましたもんね」
あ、しまった。と思った時にはもう遅い。
思った事がうっかり言葉に出てしまっていた。
もう少し言葉を選ぶべきだったと後悔していると、係長は苦笑いしていた。
「まあ、たしかに見事なビンタだったな。人生で初めて女に叩かれた」
係長でなくとも、女性に叩かれる経験を持つ人の方が、少ないんじゃないかな。
飲み物が運ばれてくるので、会話が少しの間止まる。
改めて、やっぱりあれは幻じゃなかったんだなと再認識する。
「乾杯……はやめとこう。乾杯する気分じゃない」
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