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暫く、沈黙が続く。 この雰囲気で、勢いのまま好きと言うことができたら、どれだけ楽かと思った。 喉元まで、好きが出てきたけれど、それを飲み込んだ。 断られたらどうしよう。 結局それが、頭から離れない。 同じ会社で働いていて、振られた時の事を思うと、どうしてもあと一歩が踏み出せなかった。 「さて、そろそろ帰ろうかな。あんまり長居しても邪魔だろうし」 邪魔なんかじゃありません、と大きな声で言いたかったけれど、そういう訳にもいかない。 「私の方こそ、遅くまですみませんでした」   友哉さんは、ゆっくり首を横に振る。 「ひとりで食べるより、やっぱり誰かと食べる方がいいな」 「……友哉さん、案外寂しがり屋ですからね」 「うるさい、お互い様だろ」 玄関で、靴を履くためにしゃがんでいる友哉さん。 もう、帰ってしまう。 全力でその背中に抱きついて、引き留めたかったけれど、そんな事今の私にはできない。 「まあ、否定はしません。最近、ひとりでいると、ふと虚しくなる時間がありますから」
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