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「事務長室にいると思います」 受付の佐藤さんに言われるまま、3階にある事務長室に向かった。 幾度も事務長室には来たことがあるけれど、呼ばれる事は殆どない。 重厚な木の扉をノックする。 学生の頃、校長室もこんな感じだったなと、一瞬学生にタイムスリップした。 「はい、どうぞ」という、野太い声が聞こえる。 よく知る事務長の声だ。 普通より少し重たい扉を開ける。 恰幅のいい50代前半の事務長は、椅子に深く腰掛けていた。 「失礼します。事務長がお呼びだと伺ったので」 「わざわざ悪いね。まあ、座って」 事務長は立ち上がって、応接間の方に移動する。 事務長が座ったのを確認して、俺も座る。 「実はね、仕事の話じゃないんだ。だからまあ、気楽に聞いてくれ」 仕事以外の話を、こうして面と向かってするのは初めてだ。 そりゃ勿論、ふらっと立ち話でする事はあるけれど、こうしてしっかりするとなると、また別だ。
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