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「気楽に聞けるような話ですか?」 どんな内容か、見当もつかなかった。 「ははっ。そんな大した内容じゃないよ。伊藤くんはまだ独身だったかな?」 立ち話で、独身だという事は話した記憶がある。 「はい、残念ながら」 「付き合ってる子もいないのかね?」 「そうですね、今のところはいません」 話の内容は今のところ、全く見えない。 事務長は、内ポケットからスマホを取り出して、俺の方に差し出してきた。 画面には、ひとりの女性が写っている。よく見ると、女優の船田杏奈だった。 「えっと……女優の船田杏奈、ですよね?」 今も連ドラに出演していた気がする。刑事物だったか。顔が整いすぎて、こんな刑事いるわけないと道重が言っていた気がする。 「そうだ。私の娘だ」 一瞬、耳を疑った。冗談かなと思ったけれど、そういえば事務長の苗字も船田だ。 「えっ、事務長の娘さんなんですか?」 「ああ。そういえば言ったことはなかったね」 「初耳です。そういえばどことなく似てらっしゃいますね」 「そうかね?まあ、自慢の娘だ」
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