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嬉しそうな事務長の顔。そりゃそうか。娘が芸能界に入って、これだけの大女優になれば、親としても鼻が高いに違いない。 事務長は画面をスライドして、家族写真も見せてくれた。 「厳島神社ですか。一人娘なんですね」 広島県に旅行した時の写真だろうか。割と最近な気がする。 「今でも、2、3年に一度は家族旅行しててね。娘が忙しくなってからは、どうしても数が減ってしまったが」 「仕方ないですよね。仕事がなくて暇よりは、よっぽどいいことだと思います」 「それで今日呼んだのは、その娘の事でね」 さすがに、自慢の娘の話をしたいだけではなく、何かあるようだ。 「はい、なんでしょう」 「単刀直入にいうと、娘と食事に行ってやってくれんか?という事だ」 突飛すぎる発言に、脳が理解することを拒んでいた。 それほど、理解し難い発言だ。 「えっと……すみません。食事というのは……」 「勿論、娘とふたりでだ」 そういう事を聞きたかったわけではないけれど、ふたりで食事に行くという絵は、少しばかり見えた気がした。
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