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お疲れ様といって、お互いに一口飲む。
仕事終わりに飲むビールは美味しいはずなのに、今日は緊張であまり味が分からない。
「と、いう事でだ。この前見た事は会社の人間には内緒で頼む」
やっぱりそうだよね。こんなの社内に知れ渡ったら嫌だよね。
完璧な係長だからこそ、バレたくないはず。
「言いませんよ、大丈夫です」
噂を広められる事はあっても、広める事はない。
「マジで?よかったー、今日その事しか頭になくてさ。人生終わったと思ったわ」
安心している係長は、なんだか少し可愛かった。
そしてやっぱり、社内での雰囲気とは違う気がする。
「大袈裟ですよ。係長に言われなくても、言うつもりありませんでした」
「高木にも言ってないのか?」
「言ってませんよ。遥香に言ったら、あっという間に社内に広まるなーと思って」
やっぱり言わなくて正解だなと思った。遥香はそういうのは言いたくて仕方がないタイプだし。
「ナイス、ファインプレーだ。バレたのが小嶋でよかったよ」
「……なんでビンタされてたんですか?」
もうこの際、聞きたい事は聞いてしまおうと思った。
係長とふたりでご飯なんて、滅多にないだろうし。
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