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「ありがたいお話なのですが、いまいち理由が分かりません」
なぜ俺と船田杏奈が食事に行くことになるのか。
あれほどの美貌を持つ女性だ。芸能界でも、ほっといても男が寄ってくるだろう。
わざわざ俺が食事に行く理由が分からなかった。
少し溜息を吐いた事務長は、机に置いていたスマホを、内ポケットにしまった。
「それが、娘は未だに独身でね」
「はい」
「結婚願望はあるらしいんだが、いかんせん芸能界の人間は嫌みたいなんだ」
「……そうなんですか」
そういうこともあるもんだろうか、とぼんやり考える。
芸能界も広い世界だ。そういう人がひとりやふたりいてもおかしくはない。
「以前から、良い人を紹介するよう言われていてね。それで、私の周りで独身で一番良い人を紹介しようというわけだ」
「ありがとうございます、光栄です。ただ、事務長は私の事を買い被りすぎです」
はっはっはと控えめに、静かに笑う。
「そんな事はないよ。私は人を見る目は確かだと思ってる」
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