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女性の声だ。誰か、全く想像がつかなかった。 俺は、今日事務長に言われたことを、すっかり忘れてしまっていた。 「はい、伊藤です」 初めて聞く声に、少しばかり緊張が走る。 元々電話はあまり得意ではない。知らない人なら、尚更緊張する。 「あっ、えっと夜分遅くにすみませんー。パパから聞いてますか?私です、船田杏奈です」 名前を聞いて、ようやく思い出す。そういえば電話をすると言っていた。 電話の相手が船田杏奈だと分かると、一気に緊張度合いが増していく。 菜奈と電話している時とは、また違った緊張だ。 「ああ、はい。聞いてますよ。えーっと、伊藤友哉です」 電話口から笑い声が聞こえる。名前を聞いてから声を聞くと、ちゃんと船田杏奈の声に聞こえる。 「こんな時間にごめんなさい。バタバタしてて、この時間からしかゆっくり出来なかったんですよ」 「お疲れ様です。私は大丈夫ですよ」 「疲れたーー。ねえ、聞いてください。明日も4時起きなんですよ」
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